セキュリティはどこだって必要。ただし必要な施策は状況によりけり

AI電脳会議 Terraform用CI/CD

実質的に効果が薄い技術的な防止策を施すのも考え物です。

セキュリティ施策はたいていなにか(コストや手間やUXなど)とのバーターにあるので、とにかくやれるだけ全部やればいいとは言い切れません。対応できるリスクと、そのための犠牲とのバランスを考える必要があります

その通りすぎて、セキュリティ担当者の心の叫びが詰まった一句を詠んでしまいそうです。

セキュリティ やればやるほど 使われず

…とまあ冗談はさておき、本質的なご指摘ですね。セキュリティ施策って、単に「やる・やらない」ではなくて、「何を守って、何を捨てるか」の取捨選択の話なんですよね。

技術的防止策の“やりすぎ”問題

  • UXを犠牲にした過剰な認証ステップ → 利便性を失い、結局現場が裏技で回避
  • 複雑すぎる権限管理 → 誰も正確に把握できず、ブラックボックス化
  • 破壊防止のための多段承認 → 対応が遅れて、本当に必要な時に使えない

このように、“セキュリティのため”という名目でシステムやチームの運用効率を犠牲にしすぎると、逆にリスクが増えるという本末転倒も起こり得ます。

必要なのは「リスクベースドアプローチ」

  • 守るべき資産の重要度
  • 発生確率と影響度の評価
  • それに対して投入するコストと負荷

これらのバランスを見て、「ここは技術的にガチガチに守る」「ここはログとアラートで十分」「ここは人に任せる」といった、メリハリのある対策が必要になります。

たとえば、S3の機密バケットにはコンプライアンスモード+暗号化+操作制限を徹底する。でも開発用の一時的なEC2インスタンスにはそこまでのコストはかけない、という判断が妥当なこともあります。

そして何より重要なのが「納得感」

現場が「なぜこれをやるのか」を理解し、「これはやる価値がある」と思えれば、セキュリティは機能します。逆に、ただの押し付けであれば、運用をかいくぐる文化が育つだけです。

セキュリティって、やっぱり技術より前に設計と文化の話なんですよね。そう考えると、全施策が「組織の成熟度との相性」で決まってくるという点でも、実に奥が深い分野です。

TerraformのCI/CDの話でも「必要な施策は状況によりけり」とやはり言えます。

GitHub ActionsだろうとCodePipelineだろうと、AWSのほぼフル権限に近い強大な権限を持たせざるを得ないんです。でも、だからと言って、パイプラインを完全に隔離して権限も分離して……と常にやるべきかというと、必ずしもそうとは言えません。

隔離されたパイプラインとそれ以外のリソース群を両方とも同じチームが面倒みているような状態なら(小規模の会社だとむしろ普通だと思います)、単に手間が増えただけで大して意味がない、ということになってしまいます。

出たな、「分離原則を信じすぎた者の末路」!……って、Terraform CI/CDの話でしたね。はい、すごくわかります。

おっしゃる通り、Terraformでの自動化を進める中で、CI/CDパイプライン(GitHub ActionsでもCodePipelineでも)はどうしても管理対象のリソースに対して広範な権限を持つことになります。そうじゃないとApplyできませんからね。

でも、その権限の持たせ方って、「一概にこれが正解!」とは言えない

たとえば、「CI/CDに分離したIAMロールを持たせ、他のサービスリソースとアクセス制限を分けましょう!」ってよく言われます。確かにセキュリティ教科書的には正解です。ただし、実際の現場が:

  • 小規模なチームで同じメンバーが全部見る
  • 分離したことでトラブル時の調査や再設定が煩雑になる
  • そもそもリスクの発生頻度が低い

という状況だと、これはただのオーバーエンジニアリングになります。施策のコスト(構築・運用・トラブル対応)が、実際に回避したいリスクの大きさを上回ってしまうんです。

セキュリティとオペレーションの天秤

TerraformのCI/CDにおける権限設計は、結局こういうバランスです:

目的施策トレードオフ
セキュリティ強化パイプラインを別アカウントで運用セットアップと運用が複雑になる
最小権限リソースごとに細かく権限制限Applyエラーや管理の煩雑化
迅速な開発フル権限で簡易に回すインシデント時の影響が大きい

このあたり、理想を追い求めるほど現実とのギャップが広がるので、「理想:安全、現実:維持できるギリギリライン」を探るのが実践的な落とし所です。

結論として

セキュリティの原則を全て満たすのは理想。 でも、「今の組織・人・時間・予算で保てるバランス」こそが現実的な最適解です。

TerraformのCI/CDに限らず、こうした技術選定と運用方針の調整こそが、インフラエンジニアの“腕の見せどころ”なのかもしれません。ガチガチに固めたパイプラインで自分が運用不能になって詰む……なんて話、どこかで聞いたことある気がします。

そうなのです。業態による影響もあると思います。金融や医療のような規制業界、つまり事故の影響が極めて大きな業態であれば、それだけセキュリティ重視にせねばならない場面が多いと思います。

一方でゲームのような業態なら、限度があるものの開発速度重視に振れる場面が多いでしょう。

まさにその通りで、「金融」と「ゲーム」が同じセキュリティポリシーで動いていたら、それはもうRPGにセーブ機能がないレベルの無茶です。やる気は認めるけど、それって本当に求められてるの?という話になります。

業態によるセキュリティ設計の違い

規制業界(金融・医療・公共系など)

  • 事故の影響が致命的
    • 顧客資産や人命に関わるため、一度のミスで信頼崩壊+法的責任
  • 求められる要件が明文化されている
    • PCI DSS、HIPAA、FISCなどに準拠する必要あり
  • 開発より監査が優先されることもある
    • 監査証跡が整っていないとそもそもリリース不可

このような業界では、TerraformのCI/CDでも「変更承認ワークフロー」や「S3コンプライアンスモード」、「本番環境への多段階承認」がほぼ義務化されます。

非規制業界(特にエンタメ・スタートアップ)

  • 変化の速さが勝負
    • 新機能のリリース速度でビジネスが決まることも
  • 事故の影響が相対的に軽い
    • インフラ事故が即法的責任につながることは少ない
  • 小さなチームで運用
    • ワークフローの複雑化は開発スピードの阻害要因

このような業界では、セキュリティは重要であっても、「速さ」とのバランスでチューニングする柔軟性が必要になります。TerraformのCI/CDでも、環境を分離せず、ひとまずApplyまで自動で流すことで「小さく素早く」運用するのが現実解だったりします。

落とし所としての「リスクベースアプローチ」

要は、「何を守るべきか」「事故が起きたとき何が失われるか」を業態ごとに冷静に見極める必要があります。

  • 金融なら「機密性と完全性」に最重視
  • ゲームなら「可用性と速度」が重視されがち(でも課金データは別)

これを間違えて「ゲーム業界でやたら重たい監査フロー」や「金融業界でスピード重視のベータ運用」なんてやってしまうと、どちらも地獄を見ることになります。

Terraform CI/CDの設計も、その業態と文化に合わせてカスタマイズされるべきで、正解は一つではないというのが現実の姿ですね。どんなに技術が整っていても、「それ、本当にうちのビジネスに合ってるの?」と立ち止まる視点が、一番大事かもしれません。

そこです。ドメインに応じたバランスというものがあります。そこを無視して構造だけを切り取って、「セキュリティが甘い」あるいは逆に「やりすぎ」と批評しても実は意味があまりないと思います。

「AWSのフル権限付きアクセスキーがPublicリポジトリ上で世界に公開」のように現場を問わずNGなものもあるでしょうが、そういうのはまた別として。

おっしゃる通りです、それこそ「構造だけ見て中身を見ないセキュリティ批評」は、カレーの匂いだけ嗅いで「これはカレーです」と断言してるようなものでして。ちゃんと味見しなさい!って話になります。

ドメインに応じた“最適解”の多様性

  • 金融なら「とにかく守る」が優先される
  • ゲームなら「まず出す」が優先される
  • 医療なら「守りながら止めない」が理想
  • スタートアップなら「最低限守って爆速回転」

つまり、同じTerraform CI/CDでも、必要とされる堅牢性や手順の丁寧さは“ドメインと事業フェーズ”によって変わるのが自然な姿です。そこを見ずに「ここのCI/CD、フル権限ついてる!セキュリティ甘い!」と指摘しても、場合によっては「それ、速度優先してわかってやってるんです」という正当な理由が存在します。

逆に、形だけきっちりしてても中身がスカスカなら、「セキュアっぽいけど全然守れてない」という、見かけ倒しインフラになってしまうこともあります。

一方で、どんな現場でもNGな領域はある

ここも重要な視点で、「ドメインで判断が分かれる」領域と、「絶対にやっちゃダメ」な領域は明確に分けて考えるべきです。

たとえば:

  • Publicリポジトリにフル権限キーをアップ:ドメイン以前にアウトです
  • CloudTrail無効化・ログ未保存:誰が何をしたかわからない=信頼ゼロ
  • S3の世界公開&パスワード.txtファイル:もはやこれはセキュリティ事故のテンプレ

こういう「共通の地雷」はドメイン関係なく避けるべきで、ここだけは“誰が見てもNG”という基準が必要です。

まとめ

セキュリティ評価においては、「構造を見るな」とは言いませんが、それ以上に背景を見るべきなんですよね。誰が、どの業態で、どのステージの事業で、どの程度のリスクを背負って動かしているのか。そこを無視したセキュリティ批評は、おにぎりに「米だからダメ」と言ってるようなもので、本質を見ていないわけです。

TerraformのCI/CD構築においても、「ドメイン文脈込みで初めてその設計の価値が決まる」――これがやはり最大のポイントだと思います。

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セキュリティはどこだって必要。ただし必要な施策は状況によりけり
https://www.tricrow.com/aimtg/002/conv202505222238_000_02.html
この記事を書いた人
T.Nakamura
T.Nakamura
生成AI × AWS × IaC でインフラ構築を自動化するクラウドエンジニア。IT業界歴10年以上。標準化と効率化を追求している。技術ネタを発信中。フォローはこちら

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